香港返還の日は、日本ではどこのTVのチャンネルも同じ番組だったようだ。ドイツの壁が崩れる、ソ連の崩壊、日本に初めてカンカン・ランランがやってきた、というのと同じぐらい、一生に1度の大きなニュースだったからだ。
返還当日を待たず、その前振りの番組もたくさんあったようだ。私はそのうちの1つに出演したことがある。
香港返還前の特番「香港で働く若者達」というドキュメントだった。
私は、大阪の香港観光協会の香港人スタッフと友達だったので、彼女からの紹介でだった。別に断る理由もないし、頼まれたらなんでもやりまっせ。
取材当日は、私の勤める会社にカメラが入り、仕事風景の様子と、あとは、自宅内と自宅周辺でのインタビューだった。
当日の朝は、せっかくTVに写るんだから、少しはいつもよりきれいに化粧しておこう、と頑張って化粧してスタンバッていたのにもかかわらず、
「Bettyくん、今日は取材が来るから、Bettyくんは今から化粧してきれいになるだな」
などとのたまう香港人上司( ̄ロ ̄lll)
あの~、一応これで化粧してるんですけどぉ。これが限界でスンマセン…。まわりでクスクス笑っている同僚たち。
…笑うな!(-ω-*)
という、なごやかな中でのインタビューだった。
どうして香港に来たのか、また、香港と日本の生活の違い、香港に来てよかったこと、等、真面目なインタビューが続き、予想通り、日本は男尊女卑で働きにくいですよね、という展開になったので、「そうですね」 と答えると、「もう日本には帰りませんか?」 と聞かれたので、 「帰ります。日本はこれから少しずつ改善されていくと思う。私は日本が嫌いなワケではないし、日本には絶望していません」 と本音で語った。
ヤッタ!本音トーク炸裂!香港で働く若者達!
と思っていたら、実際の放送では、そんなカッコイイところは省略されて、「はい、ジャッキー・チェンのファンです」 などという、どうでもいいようなところが映っていた。
どんな編集の仕方やねんっ。ちゃんと編集せんかい。
しかも、部屋の中のヘヴィ・メタルのCDなんかが映されたりしていた。そんなの別に香港返還に何の関係もないし(*-ω-)
実は取材に来たTV局の担当の人がヘヴィ・メタル好きなだけだった。
しかし、そんなこんなの取材だったが!
返還前の特番になるはずだったのに、急遽、横から入ってきた更なる特番に割り込まれて、番組自体が大幅に削られ、私はなんと10分ぐらいしか映っていなかったのだ。その割り込みの特番とは、「衝撃!タンク山殺人犯、酒鬼薔薇聖斗は中学生だった!」だった。
酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)に負けた香港返還。
私は、番組のことは恥ずかしいので実はだーれにも言っていなかった。両親ににだけ言っておいたので、両親はビデオに録っておいてくれた。
しかし、両親から送られてきたビデオを見て、アゼンっ!!(゚ロ゚;)
この日本語をしゃべってる太い人は誰ですか!? なんだか見慣れた人のような気がします…。TVは太目に映るというのは本当だった、ということが、今ここに判明!あぁ~だれにも言ってなくてよかった。「衝撃!私ってこんなにデブだった!」って感じ?
私はこのとき初めて知った。普段、TVで見ているきれいな女優さん達、あの人達はいかに細くて美人か、ということを。
別の意味で大変勉強になった番組取材であった。