<「浮浪者と黒い犬」の続編>
セントラルの渡り廊下に縄張りを持つ浮浪者に飼われているアロイだったが、風邪も治って、すぐに元気になっていた。
よかった、よかったぁ!(^-^)
私の顔を見ると、元気に走り寄って来るアロイ。私も嬉しいが、それよりもおじさんの方が嬉しいに違いない。
「元気になって良かったね。また私がミルクティー買ってきてあげるよ。」
浮浪者に飼われている犬は、所詮、暖をとるためのカイロか、いざという時の非常用の食料だ、と思っていたのだが、このおじさんとアロイを見ていて、そんな私のチンケな仮説は既にこっぱみじんに打ち砕かれていた。
そりゃー、犬ほどかわいいものはこの世に存在しないよねぇ!(断言)
しかし、ある日、通りかかると、おじさんだけがいて、アロイがいない。
「おじさん、アロイはどうしたの? 1人で散歩中?」
「いや、アロイはなぁ、いなくなったんだ。…もう、ここにはいないよ」
え、あんなにかわいがられていたのに、何故!?( ̄□ ̄;)
大ショックだ!!
「売られて行ったの? それとも…?(最悪の仮定)」
「いや、アロイは、湾仔(この中環から2駅の所)で別の人の所に行ったよ」
湾仔って…。それだけの説明じゃ、わからないよ~。でも、おじさんは、湾仔でアロイは元気だ、それしか言ってくれなかった。
あぁ、アロイ…。私の自由になる犬が…_| ̄|○
浮浪者の自分よりも、裕福な(普通の?)人にもらわれた方が幸せ、と思ったのだろうか? それとも本当は最悪の事態なのだが、本当のことを言うと私が悲しむと思ってそう言っているのか?しかし、詳しいことはわからない。
それからおじさんも一人ぼっちで、私もその渡り廊下を通る楽しみが無くなってしまった。
アロイと一緒に写真撮っておけばよかったなぁ。かわいかったアロイ…。
* * *
しかし、それからしばらくして、フェリーに乗るため、何の楽しみも無い渡り廊下を歩いていると、おじさんが嬉しそうに白い子犬とたわむれているではないか!
あぁっ、あれはどうした!?新しい犬か!?
それより、おじさんに新しい犬を買うお金があるとは思えない。拾ってきたか、盗んできたか、奪ってきたか、のどれかだと思う。
…1番目の案を採用しよう。
「これ、新しい犬?」
「そうだよ、かわいいだろ?また遊んでやってくれ。名前は黄毛(うぉんもう)っていうんだ」
え、黄毛って…?(´Д`;)
これ、どうみても白い犬じゃないか。名前を付けるなら 「シロ」 とか、そういうのが妥当だと思うが、いくら汚れてるからって、「キイロ」 はないだろう?香港人の感覚は、ようわからん…。
「こいつも白切鶏飯が大好きなんだ。でも、こいつはアロイと反対で、ご飯ばっかり食べて、いつも鶏を残すんだ。おい、ちゃんと全部食べろよ。」
早速、速攻で白切鶏飯を買ってきて黄毛に与えると、おじさんの言うように、ご飯ばっかり食べている。
「こら~、鶏も食べろ、黄毛~!」
黄毛も、まだ子犬だが、よく人になつく、大変かわいい犬だった。やはり黄毛も、おじさんや阪神巨人にかわいがられているようだった。
それにしても、汚いなぁ~。
もしかして、アロイは黒い犬だったから気づかなかっただけで、実はアロイも相当汚れて、汚かったんじゃないか?
黄毛がやって来て、また、私の渡り廊下を通る楽しみができた。