■ 香港経由、旅たびアジア

ミャンマー編タイトル

< 運賃箱  2 >

名鉄に乗る乗客

<つづき>

そして、駅員さんは、「この車両は、何十年か前に日本からプレゼントでもらったものです。私達ミャンマー人は、お金を払っていません。私達は日本に感謝していますよ」 と言われた。

とても、穏やかな微笑み。その瞬間、私の心の中に温かい風が吹いた。

そして、わざわざ列車内まで一緒に乗り込んでくれて、まるで何もわからない子供に教え聞かせるように、「君達の降りる駅はここだから、ここで降りるんだよ、9番目だよ」 と、路線図を指差しながら懇切丁寧に教えてくれるのだが、ミャンマーの文字はグルングルンと渦巻いた暗号のような文字なので、私達には読めないのだった…。

列車は、ほんとう~に古かった。

最初からドアがなく、床は板製だ。窓といえば、ガラス窓ではなく、雨戸のような頑丈な窓なので、窓を閉めてしまうと、真っ暗になってしまうのだった。だから開け放して走る。(ドアがないので、「真っ暗」 にはならないが)

あぁ、ノスタルジー気分満開(´-`).。oO

駅に停車するたびに、スイカ売りやビンロウ売りなんかが乗り込んでくる。坊さんも乗る。警察官も乗る。自転車持参の人も自転車ごと乗っていた。

古い列車の車窓から見える景色は、とても のどかな風景が続いていた。延々と続く緑。線路脇に洗濯物を直に地面に置いて干しながら、その横で昼寝しながらくつろぐ人たち。…おいおい、もしかして、線路で生活? くつろぎ過ぎじゃないかい?(´∀`;)

ずーっと昔に日本が寄付をした運賃箱つきの年代物の列車に、今、私が乗ってヤンゴンを走っているなんて、なんだかとっても嬉しくて、楽しい気持ちになった。

そりゃー懐かしいはずだ。私達の両親なんかを連れてきて乗せてあげたい。きっと、昔にタイムスリップしたみたい、と言うに違いない。思わぬところで、海外旅行のみならず、時間旅行もしてしまったような気分だ。

まるで、ゆっくり景色を楽しんで下さい、というようにオンボロ列車はゆっくり走る。

暑いミャンマーを、さわやかな風が吹いていた。

*ビンロウ…東南アジアで広く利用されている噛みタバコのような嗜好品。ビンロウの種と石灰と何かを混ぜた物を噛むと良い気分になれるらしい。赤い唾液がでるので、唾液は飲み込まずに吐く。よく、香港の重慶マンションの階段で赤い液体がしたたっているのを見て「血だ!」と勘違いする人が居るようだが、あれはビンロウを噛んだときの赤い唾液だよ。

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